今年一番好きだった絵
今年、一番好きだった絵。
ヴィルヘルム・ハンマースホイ の「背を向けた若い女性のいる室内」(1904)。
ポストカードを複写したものなので、本物の美しさにはほど遠いですが……。
今年は、ラファエル前派のミレイ展で念願のオフィーリアも見たし(昔、ロンドンのテートギャラリーへ行った時、貸し出し中だったのか、展示がなかったので、ようやく本物を見られて感激!)、フェルメールも行くには行ったのだが、あまりの人の多さに、じっくり鑑賞できず、とりあえず本物を確認しに行った……という感じで、振り返ったら、このハンマースホイが一番心に残っていた。
清潔で静謐な空間。
こういう静かな絵には、本当に心惹かれる。現代の人間にも訴えかけるものがある。
とにかく、ひと気のない室内ばかりを描いた人で、たまに人物がいるかと思えば、こんなふうに後ろ姿だ。何も訴えない、顔も見えない人物だからこそ、見る者の想像力を掻き立てる。短編小説のひとつでも生まれそうな雰囲気。
当時、絵に描かれる人や室内は、その富を誇示するものだったのに、ハンマースホイは見事までにそういった現生的なものを削ぎ落とす。
こんな画家がデンマークにいたことはまったく知らなかった。フェルメールにも影響を受けているそうだ。
ブルーグレイ、グレイ、白、黒、茶色といった色調がほとんど。
ちなみに上の絵の横にあるのは、ロイヤルコペンハーゲンのパンチボウル。
他にも、ロイヤルコペンハーゲンのものがさりげなく描かれていて、長い時を経て受け継がれ、愛されているものには、強い美しさがあるなあと感じた。
ハイハンドルの真っ白なカップなどがとても美しく、今でも作られているタイプなので、ほしいなあなんて思いつつ、見ていた。
ところで、家具の影があり得ない方向に伸びていたり、妻の足と椅子の足がひとつに溶け込んでいるように見えたり……マルグリットのだまし絵的な手法もあった。
それから、部屋のドアにノブがない絵も。
どこにも行けない、そこだけで世界が充足し、完結しているような不思議な絵。
閉塞的な絵なのに、なぜか癒されるような開放感があった。
また、会場には、ハンマースホイが愛したストランゲーゼ30番地の自宅が3Dになっていた。
室内や家を描き続けたハンマースホイの絵は、建築家の人などが見たら、とても興味深いのではないかと思ったが、どうだろうか?
今回の展覧会は、北欧に詳しいcalvinaさん のブログで教えていただきました。
いつも、よい情報を教えてもらっています。ありがとうございました!
今年一番心を鷲掴みにされたダンス
ピナ・バウシュの「フルムーン」
今年一番心を動かされた映画
「善き人のためのソナタ」(ドイツ映画・WOWOWにて)
落ち着いたら、いつか詳しく書こうと思います。
今年一番笑った映画
「パリ、恋人たちの2日間」
今年いちばんうっとりした音楽
菊地成孔 ペペ・トルトメント・アスカラール公演
オーチャードホール 12月6日
こうしてみると私は、憧れはラテンなのですが、本質的には、じっくりみっちりと内に向かう、北の方の人たちの表現に共感しがちなようだ。
ハンマースホイ以外は、連れ合いと一緒に見たり聞いたりしたものばかりなので、今年もこうして一緒に楽しめたことにも感謝!
美しいものにいろいろと出会えた一年だった。
そして、今年一番やった!と思ったことは、引っ越しが決まったこと。
というわけで、荷造りに戻ります。
世の中が華やぐクリスマスやお正月が近づくにつれ、私の部屋は殺風景に、殺伐となっていくので、なんだか不思議な感じ(でも心の中はわくわく)。
ネットも12月末でつながらなくなるので、今年最後の更新です。
今年1年間、ありがとうございました。
皆様、よいお年をお迎えください。
次の更新は、新居からです!
(無事に引っ越しできますように!)
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