2010年 手術の旅―<番外編>役に立った本
まだ続く入院日記……と思われるかもしれませんが、今回は日記ではなく、病気に関して役に立った本の紹介です。
<心に効く本>
おなじみ大島弓子の『グーグーだって猫である2』(角川書店)。
実はこの2巻、大島弓子の闘病生活を軸に描かれている。
発表当時も読んだ記憶があるのだが(初出1999年)、当時、私は病気ではなかったので、わー大変だったんだ、くらいで、どこか他人事ではあった。
でも、こんなふうに病気を捉えることができるなんて、さすが大島弓子だ、私はこんなふうに思えないだろうな……と思ったのは鮮明に記憶に残っていた。
例えば、こんな一文がある。
ドクターに
ありがとうを
言うのを忘れてた
ありがとう
ドクター
ありがとう
ナース
多くの人々
全ての動物と植物
あらゆる管と
小さなチューブ
精密な計器
麻酔薬と痛み止め
そして
休みなく動き続けた
今はなき
子宮と卵巣
ほんとに
ありがとう
初めて読んだ時、およそ10年後、自分も同じ病気になるとは思っていなかったから、辛い思いをしてもこんなふうに感謝の気持ちになれるのかなあと感じた。
でも、読み返してみて、今はこの気持ち、すごくわかるのですよ。
タイトルは「人生の大晦日」。
冒頭に、急に痛みが出て、緊急入院したのが12月だったので、「普通の師走を通り越して 人生そのものの大晦日といったかんじになってしまった」とある。
私の入院は12月ではなかったけれど、この「人生の大晦日」という感じもわかるわかる、上手いこと言うなあと思ったものだ。
そのほか、手術からその後の入院生活まで、詳しく描かれているので、参考になった。
大島弓子は、子宮筋腫のほかに、卵巣腫瘍もあり、手術後、抗ガン剤治療も始め、そこからがまた大変だったそうだ。
私は手術後は回復を待つばかりだったから、ほんとにありがたいなあと思った。
手術だけでも大変なのに、そこからまた化学療法が始まるなんて辛すぎる。
とにかく、この作品を再び読んで、随分救われた。
大島弓子の作品には、もう30年くらい、人生のいろいろな局面で救われているなあ。
<実際的に役に立つ本>
『子宮、応答せよ』(得能史子 講談社)。
やはり漫画家が自らの子宮筋腫体験を描いたもの。
マンガだと、それほど深刻にならず、わかりやすくてよかった。
とはいえ、彼女の症状はかなり重く、私と似たところも多く、共感しまくりだった(彼女も最初、迷いに迷うのだが、子宮全摘を決断)。
私は手術を決めて、入院直前に読んだのだけれど、こういう本がもっと早くからあれば、あれ程悩まなくてもよかったかも。
でも、術後の様子なども詳しく描かれているので、その辺がとても参考になった。
数ヶ月経って、手術したことも忘れるくらい元気になっていて、自分でも驚いたみたいなことがマンガで楽しく描かれていたので、かなり励まされた。
専門書だと、病気の症状や治療法についてはある程度書いてあるけれど、結局、医師の診断を受けてください――みたいな感じで終わっているので、実際のところがよくわからないのだ。
その点、この本は具体的な症状から、病院選び、検査のこと、入院・手術・術後の生活のことまで、本人の気持ちに沿って「実際のところ」が描かれている。
シリアスになりすぎず、でも押さえるところは押さえてあり(もちろん医師の監修付き)、よい本だなと思う。
多い病気なのに、あまり知られていない子宮筋腫。
命に関わる病気ではないが、症状によれば、臓器をひとつ摘出する大手術まで必要になるわけで、もしまだ妊娠を望む人であれば人生を左右する大事である(望まなくても、やはり大事である)。
その他、筋腫だけでなく、卵巣の病気もあるし、子宮内膜症の人も多いと聞く。
もうちょっと研究というか、話題にされてもいいと思うのに、あまり大きく取り扱われないのは、やはり女性だけの問題で、男性は関係ないからかな……なんてちょっと思う。
ガンや、いわゆる生活習慣病だのメタボだのの騒ぎ方と比べ、ほとんど注目されていないというか。
女性の生殖機能に関わるところだから、あまり公に語られない、というのもあるのか知れないが。
などなど、あれこれ考えるようにもなった。
ありきたりなもの言いになってしまうが、病気をすることによって、生きている実感がより強まったというか、ささやかなことも嬉しく感じられるのは、今回のような体験がなければ味わえなかったことで、病気も悪いことばかりでないなあと思う。
さて、週明けからいよいよ職場に復帰です。休んでると、早い早い。
残暑どころか、まだまだ猛暑だよ……。
もうちょっと体が動くようになったら、またゆるめのヨガなども復活させ、健やかな日々を送りたいものである。
あと、マイナス・オーラを発散する人からも(困ったことに、いるのよねえ)、バリアを張って、自分の心身を守りたいと思いますです、切実に。
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