シシリー・メアリー・バーカー(Cicely Mary Barker)没後40年
今日は、イギリスの妖精画家シシリー・メアリー・バーカー(Cicely Mary Barker)没後40年です。
1895年6月28日生まれ、1973年2月16日没、ということはわりと最近まで生きていたのですね。
もっと昔の人だと思っていました。
というか、妖精の絵に引き込まれ、作者のことはあまり考えたことがありませんでした。たまたまWikipediaで知ったのです(便利な時代です!)。
昔、森永のハイクラウンチョコレートのおまけに入っていた妖精の絵のカード、と言えばわかるでしょうか。
40代以上の女性は覚えている方が多いらしく、私も集めてた!という話でよく盛り上がります。
当時、まだ昭和の時代、1970年代は少女マンガが勢いを得てきた頃ですが、海外の可愛いもの、美しいものはそれほど多くは入ってきていなくて、このflower fairiesのカードがそういったきれいなものの先駆けだったようなーー少なくとも私にとってはーー気がするのです。
中学生の頃、ハイクラウンチョコレートをいったいいくつ食べたかわからない!というほど買って集めていたのに、今、手元に残っているのはこの2枚だけ。
1冊にまとまった詩集が手に入るようになり、処分してしまったのか、なんとなく消えうせてしまったのか、記憶は定かではないのですが、このカードの価値というか貴重さに気づいたのは、大人になってからのことです。
まがりなりにも編集という仕事をするようになって、当時使われていたこのカードの紙質のよさ、色のよさなどに改めて驚かされたのです。
詩集をめくっても、このカードとつい比べてしまい、なんか紙が安っぽいな、なんて思ってしまう。
でも、まあ、詩集は詩集で素敵ですけれどね。
春夏秋冬と四季ごとの花と妖精が描かれ、詩が添えられた「フラワー・フェアリーズ」シリーズです。
今めくってみると、花の描写の緻密さ、正確さがこのファンタジーを支えていることがわかります。ふわふわしただけのメルヘンじゃないのです。そして、それぞれの花が衣装化されるとこうなる!というセンスのよさ、妖精たちのはずむような軽やかな動きと、どこをとっても本当に完璧なのです。
最近はグッズに使われることも多く、実を言うと飽き気味だったのですが、改めて見るとすごいです。
作者のシシリー・メアリー・バーカーは病弱のため学校には通わず、家庭内で教育を受け、読書と絵画が好きな子どもだったそうです。
早くから絵画の才能に目覚めましたが、不幸なことに父親を早くに亡くし、家計をささえるために絵を描き続けていたそうです。
「シシリーは内気な性格であったので、外の大人の世界とは隔絶して、家族に守られる生活を続けた。彼女の詩には、純粋さと無垢の要素が維持されたが、このような彼女の生活から来たものとも言えた。」
その内向的な性格が、ああいった密かな美しい世界を育んだのでしょう。
「シシリーにとっては、しかし芸術家の友人たちよりも、家族の方が一層に親しみ深く、また重要であった。シシリーにとって悲しみであったのは、
1954年に、姉のドロシーが心臓麻痺で世を去ったことだった。老いた母親と二人残されたシシリーは、家事を維持するのに精一杯で、創作活動は休止された。」
Wikipedia より
Wikipediaを読む限りでは、生涯結婚もしなかったようです。
そして、そんな美しい妖精を描き続けたシシリーには、多くの苦労があったんですねえ……。
あんな才能があったのに、「家事を維持するのに精一杯で、創作活動は休止された」だなんて、なんだかしんみりしてしまいました。
でも1973年まで長生きもして、晩年は視力が衰えていたそうだけれど、彼女の妖精画は今でも愛されている。
時と場所を越えて、いつまでも残るでしょう。
素晴らしい仕事をした人だなと思います。
それと、「モリナガさん」にも感謝ですね。
妖精研究家の井村君江さんがあの企画を考えた方にお会いしたことがあると言っていた記憶がありますが、どんな方だったのでしょうか。
同じ完成度であのカードだけを再発してくれたら(チョコレートはちょっと、もういらないかな)高価でも買うぞ!なんて思っている私ですが……。
10代の私の感性を開いてくれたのは、萩尾望都のマンガと共に、間違いなくこの「フラワー・フェアリーズ」も入るなと思い出し、書いてみました(シシリー没後40年とは、世の中では誰も言わなそうな感じなので)。
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