追悼 Pina Bausch----その強い不在感
今日、6月30日はピナ・バウシュの命日。
突然の訃報を聞いて悲しみにくれてから、早くも3年が経ちました。
(このわずか3年の間に日本に起きたことを思うと、またいっそう複雑な思いにかられますが……)
今年は、ヴェンダースの映画も無事公開されたれど、やはり喪失感は消えません。
先週、J-WAVEで、ピナの舞台音楽を手がけた三宅純氏が話していて、「強烈な不在感」というようなことを言っていたのが心に残りました(正確な言葉は思い出せないが)。
まさにそのとおり。年月が経つと忘れるどころか、その不在感がますます色濃くなるような……。
三宅氏と「フルムーン」のサントラ盤を制作した時のエピソード。
制作に入ったある日の夜、ピナから彼のもとに電話があり、そこでピナが何を言ったかというと……。
「これはいったい何のためにつくっているの? 売るためのものなの?」
と、とても不思議そうに尋ねてきたのだそうです。
一瞬、三宅氏は何を言われているのかわからなかったとか。
売るために何かを制作する、ということが理解できなかったらしい。
利益だ、やれマーケティグだ、世の中はそんなに甘くないとか、そんな言葉ばかりで、美しいもののひとつも生み出せない今の世の中。
薄ぺっらでうるさくて醜くてばかばかしいものばかり増えている……と毒づきたくもなるけれど、自分もたいしたものを生み出せないからこそ、ピナの踊りに魅せられるのでしょう。
お金とか名誉とかそういうものとは無縁のところで、ただただ、表現するために踊り続けた人生。
それはひとつの奇跡。
ファンにとっては、ピナがこの地上から飛び立つには少し早かったと思うけれど、その人生の後半ではお金に無関心でいてもひたすら踊るために身を捧げられた……ということは幸せな人生だったのだろうと思います。
ということで、命日を偲んでこの美しい映像をどうぞ。
ブッパダール舞踊団のはyoutubeにあがっていても削除されてしまうことが多いのですが、これは残っていました(これも消されてしまうかもしれませんが)。
以前もネットで見たことがあり、誰の作品かよくわからなかったのですが、Lee Yanorという女性アーティストの映像でした。
舞台の上だけでなく、カフェでコーヒーカップを前にしてもピナは美しいのだなあ。
公演が終わった後、ダンサーたちと一緒にバーで飲み、お店から「閉店時間です」と言われても、「私は帰らないわよ」とよく言っていたというピナ。
私はなんとなくこのエピソードが好きです。
最近のコメント