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2009年11月22日 (日)

BBCドラマ「ミストレス」に夢中!

 BBCドラマ「ミストレス」 (MISTRESS)が面白い(日本ではCATVのLaLaTVで放送/現在、シーズン1と2と合わせて12話まで放送)。
 イギリス版「SEX AND THE CITY」(以下、SATC)と宣伝されていて、イギリスでもそんな二番煎じみたいなドラマつくって……海外ドラマは見始めるときりがなくなるからなあと、初めは見ていなかったのだが、試しに、ある日唐突に1話だけ見たら、ストーリーの前後関係がわからないにも関わらず、あまりの面白さにびっくり、そのままのめりこんでしまった。
 SATCより、もうちょっとシリアスで、見応えたっぷり。
 よくわからないまま見続け、再放送の折りにひととおり見ることができた(途中、録画に失敗し、ところどころ抜けてはいるので、人間関係でよくわからないところもある)。

 以前、このブログでも女性の年齢のことや大人の(つまり、若くはない)女性が魅力的に描かれた作品が少ないと書いたことがある(ドラマの中の若くない女性たち  キョンキョンと亀梨クンから「デブラ・ウィンガーを探して」まで―女性の年齢について 参照)。
 そういう意味では、このドラマでは正に若くはない、大人の女性たちが主人公で、それが実に魅力的で、リアルな女性像となっている。

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 左から~トゥルーディー(=シャロン・スモール)。夫をアメリカの911で亡くしたが、本当は生きているのではないかと思いつつ、シングルマザーとしてふたりの娘を必死で育てている。夫がいる間は専業主婦だったらしいが、ケーキづくりの腕を活かして、手づくりのお菓子を近所のデリカテッセンへ卸す仕事を始めている。
 心配性でなかなか新しい人生を踏み出せないのだが、そこがまたよさでもあり、やさしい心の持ち主。
 ジェシカ(=シェリー・コン)。恋愛や結婚の決まった型にとらわれたくない自由主義者。職業はイベント会社の敏腕プランナー。快楽主義者ではあるが、自立していて強い。インド系の血が入っているらしく、登場人物のなかで一番美人で強いのがエスニック系の女性、という設定がイギリスらしい(あ、アリーMyラブもそうだった)。
 ケイティ(=サラ・パリッシュ)は、医師。キャリアウーマンだけれど、なぜか恋愛では安定した関係を結べない。自分が看取ったがん患者と不倫関係だったが、その息子とも危うい関係になり、転職先の病院で恋人ができたにも関わらず、元上司とまた不倫に……おいおい、それはいくらなんでもよろめき過ぎでは?!と言いたくなるし、恋愛関係に何かトラウマがあるのか、問題を抱え込みがち。でも、確かには弱い面もあるが、言い訳をしないし、責任は自分で取るし、ぎりぎりのところでは孤独と向き合えるところもある。
 一番右端、シボーン(=オーラ・ブレイディ)は、弁護士。夫とはすれ違いが多く、他の男性と関係を持ち、そこから思わぬ波紋が(彼女はこのドラマ出演時すでに46歳くらいなのだけれど、美しい! アイルランド系の人だそうです)。美しく仕事もできるのに、いやそれ故か、人生は波乱気味。でも決して折れることなく、「修羅場」での態度がお見事。覚悟を決めた女は強いというか、カッコいい。

 というわけで、実際の女優さんたちも、ドラマの設定年齢も、40代真っ只中という感じで(ジェシカだけ少し若い?)、女性の多様な生き方を見せてくれる。
 特に、シボーンは、今まで描かれてこなかったタイプの女性だと思う。
 結婚10年経ってもなかなか子どもに恵まれない。また、妊娠だけがセックスの目的となってしまった夫に――今日は君は排卵日じゃないから、などと夫に言われる――違和感を抱いているシボーン。
 ある時、思い切って夫婦で検査を受けに行くと、夫が無精子症ということが判明。それにショックを受けた夫は、ますますシボーンを避けるようになり、すっかりセックスレス状態に。
 この時点で、シボーンの夫は自分が原因で妊娠させられないが故に、拗ねているようにしか見えず、しっかりしろよと言いたくなるのだが、それにしても、こういうリアルなテーマをよくぞここまで踏み込んで描いたなと思う(男性にとっては、アイデンティティの崩壊にも近い状態をもたらすのだなあとか。男性はあまり見たくないドラマかも:笑)。
 夫とますますぎくしゃくし、女として見てもらえなくなったシボーンは孤独と焦燥感にかられ、職場の同僚と関係を持つ。 
 そして、彼との子どもを思いがけず妊娠、迷った末に出産し、夫も認めるのだが……ふたりの間の溝は埋まらず、シボーンは満たされない思いを抱え、今度は行きずりの男と関係を持ち、そこから思わぬ恐ろしい展開が……。
 相手を転落させるためだけに冷徹に周到に迫ってくる男というのが、本当にヨーロッパとかにはいそうで、それがまた資産家でインテリ風でもあったりして、この人物像ほんとに怖かった。
 この辺はミステリー風な展開にもなっており、ドラマの見せ場でもある。
 また、トゥルーディーの、911で亡くなったはずの夫も実は……という展開も用意されている。
 話はシボーンに戻るが、彼女は自分が外で関係を持つことによって、逆に夫との関係もなんとか保てるのではないかと考えるのだが、人間とはそう簡単に割り切れるものではないことを知らされる。
 と、文章にしてしまうと、キャリアはあっても、なんだか節操のない傲慢な女性に思われてしまうかも知れないが、このドラマでは実に魅力的な人物になっているところがポイント。
 内面ではさまざまな葛藤を持ち、内省的に描かれているので、嫌悪感は感じられない。 それに、こういったパターンは男女を逆にしてみれば別に珍しいことではない。
 むしろ、女性にも欲望はあるということを忠実に描いているのだ。

 先日、湯山玲子さんのトークショーに行ったのだが、その時、日本には「女から誘う文化がない」と言っていたのが印象的だった(湯山さんはこんな人、公式HPはこちらへ湯山温泉 )。
 つまり、誘われるのを待つしかないんですね、女は。
 それでなくても、草食系男子とやらが増殖中の昨今、ますます……。
 で、湯山さんはこういうことはテレビドラマなどの大衆芸能がやるべきことで、テレビがさぼった、テレビの功罪だとも。
 現実とはずれた女性像を日々見せられていたら、いつしかそっちのことを本当のことだと思ってしまう、と。
 例えば最近のテレビドラマではこんなシーンが……働くシングル・アラフォー女性が、夜、ひとりになった時ほろりと泣く(会場では皆、笑)、今時、若い女性が3高男を求めて婚活をヒステリックにする……とか。
 あるいは、洗剤のCMで、専業主婦らしき女性が昼間洗濯ものをたたんで、うわあふっくらと言っているとか。今時、働く女性が増えて、洗濯なんか夜するというのがデフォルトでしょう(会場では一同、頷く)、などなど。
 さらに、「女から誘う文化」――ここのところを描けば、最大のマーケットにもなる、とのこと。
 また、日本では誰も言わないが、「恋愛体質」とか言ってることの本質は、所詮、性欲のきれいごと!というお話にも目からウロコというか、納得する部分も大いにあって(笑)。
 その辺りのきれごとじゃない面を「SATC」をはじめ、この「ミストレス」などは、きちんと、でも洗練させて描いているわけなんだなあと思った。

 湯山さんも海外ドラマの話をされていた(SATCとグレイズアナトミーなどについて。うう、また見るドラマが増えるのか……)。
 SATCなどは、何人ものクリエイターが集まってさまざまなリサーチをしたり、エピソードを集めたり、そこれそハリウッドの頭脳集結!みたいな感じで、ものすごい労力をかけてつくられているのだとか(見ている側は、さらさらとあっという間に楽しく見てしまうのだが)。
 あれは男性が認めたくない新しいストーリーでしょう、とも。
 最近私が考えていたこととリンクして、ちょっと嬉しかった。

 誰かを探したり、結ばれたり、という時期はとうに過ぎて、一度誰かと結ばれたはずなのに壊れてしまい、道は平坦ではなかった――だからこそ、そこから先の景色を見たい、という「若くない女性」の気持ちにぴったりとはまるドラマだと思う。
 ミストレスというのは、愛人という意味らしいが、そうやってさまざまな過程を経て、年を重ねるにつれ、相手もすでに誰かのものであったりと、一筋縄ではいかない、一時でも愛人という立場になることは誰にでもありうる、という意味合いが込められているらしい(後述―実は、このMISTRESSには、他にも広義な意味があるらしいので、調べてみます)。
 
 さて、この「ミストレス」、ストーリーの面白さだけでなくファッションやインテリアなどもなかなか素敵。
 シボーンはエレガントなキャリアウーマンといった感じで必見。
 SATCのような華やかさとはまた違う、シックな装い。弁護士という仕事柄、スーツが多いのだけれど、中に着ているブラウスがちょっと甘い雰囲気のパフスリーブだったり、セクシーなノースリーブだったり(湿度の低いヨーロッパだからできるファッションだなあ)。
 トゥルーディーが、キャス・キッドソンのバラ柄(私は同じ柄 のトートバッグを持っている!)のドレッシングガウンを着ていたり。これをふざけて婚約者の男性が羽織ったりするのが、後のエピソードに微妙にリンクして ちょっとドキドキしたり。
 インテリアを見るのも楽しく、ケイティの家は一戸建てらしいのだけれど、1階のリビングが一面ガラス張り。そこでバスローブ姿でコーヒーなんぞ飲んでいるケイティ。演出としては ドラマティックなのだけれど――恋人がそのガラス越しにいきなり立っているとか――そこから出入りできるらしく、この家にはあえて玄関はないのか? 防犯はだいじょうぶなのか?とか、あれこれ想像してしまう。
 弁護士に医師という、ハイクラスな職業ではあるけれど、そこはまあドラマということで、多少の華やかさも必要なので、それほど厭味ではない(皆、仕事はしっかりしている描き方で、そこもリアリティあり)。
 こんな風に、身に付けているものから部屋の様子までよくできていて、見ていて本当に楽しい。
 あと、トゥルーディーは結構ぽっちゃり体型で親しみが湧き(彼女は表情の変化が巧みで、素晴らしい演技力! もちろん4人とも演技力◎)、ケイティは長身、エラもちょっと張っていてゴツイ感じだけれど魅力的!といった風貌で、現実離れした美人ではなく、ふたりともいかにも今のイギリスにいそうな感じ。で、ジェシカはチャーミング、シボーンはエレガントと、4人がそれぞれ個性的なのだ。
 このドラマはそんなに長く続かず、次のシーズン3で終わってしまうらしいが、早く見たい。 

 それにしても、男女間の心理描写が丁寧に出ているけれど、「ミストレス」も、「SATC」と同じく通奏低音のようなテーマは女同士の友情。
 男女間の恋愛劇だけにせず、ここにポイントを置くのが現代的なのかも。
(女同士ってほんとよく喋るよねえ――洋の東西を問わずって感じだ。女性の方が長生なのは、お喋りに秘密があるのかも知れない!)
 
 と、日本ではまだ全然話題になっていないので、いち早く書いてみた。
 いち早くもないかも知れないが、ググってみる限りでは一般の人のブログなどには少ししかあがってきていないようなので(まだCATVでしかやっていないから)。
 きっとそのうち日本でも評判になると思う。DVDも出たら、買ってしまいそうだ。
 ちなみに、英語のセリフが凄く聞き取りやすく(さすがBBCドラマ)、しっかり字幕を読んでいるのだが、あまり読んでいる感じがなく、まるでネイティブになったかのような錯覚も楽しめる(笑)。英会話を勉強したい人にもおすすめ。

(LaLaTVさん、新シリーズの前にまた再放送してください!) 

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