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2008年8月24日 (日)

ルドゥーテのバラ

 Rose3 6月に行った、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムにて開催されていた薔薇空間 について。
 展覧会の構成の中心は、ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテのバラの絵。
 ルドゥーテはベルギー生まれで、フランスの宮廷画家として植物画をたくさん描いた(1759~1840)。
 ちょうどマリー・アントワネットがいて、フランス革命やら何やら、激動の頃のフランスにいたということになる。
 当時は、写真がなかったので、このような緻密で正確な植物画が求められ、ルドゥーテのような人はアーティストではなく、職人的な立場だったのだろう。
 それにしても、ルドゥーテの作品を見ていると、アーティストと職人の境界とは何だろう?と思ってしまう。
 それほどに、彼のバラの絵は、なんと言ったらいいのか、強烈だった。
 彼は自分自身を主張するつもりはなく、ただただバラを正確に描き写したのだろうけれど、そこにはルドゥーテだけにしか出せない個性が強力に現れていた。
 美しいバラには刺があるとはよく言ったもので、ルドゥーテのバラも「美しい」とだけ言って終わりにできない吸引力というか、とてつもない迫力があった。
 原寸大で、花だけでなく葉っぱの葉脈一筋一筋、茎の刺一つひとつ、あるいは虫食いに至るまで省略されることなく、完璧に再現されている。
 うなだれたバラはうなだれたまま、蕾は蕾のまま。
 開花したバラの真ん中から、さらにまた新しい茎がにょっきりと伸びてバラが咲く……ということがごく稀にあるらしいのだが、そんな不思議な生命力を放つバラも描かれていて、なんだか「エイリアン」のようだった。
 絵のバラが、そこから立ち上がって、こちらに向かってくるような、「美」というより「妖気」さえ感じられ、本当にバラの香りが漂ってくるかのようだった。
 そして、こんな空間には『ポーの一族』のエドガーとアランがふらりと現れそうでもあり(笑)。

  また、Bunkamuraの展示の仕方も素晴らしく、ディフューザーで数種類のバラのアロマを噴射していたり、バラの種類ごとにわかりやすくバックのパネルの色が変えられていたり(白、ピンク、濃いピンク、ペパーミントグリーン辺りの色だったと思う)、庭の東屋を模したような展示があったり。
 3DCGムービーでは、バラが蕾から花開いて萎れるまでや、雨に打たれてやがて晴れて風にそよぐまで……などが、ルドゥーテのバラで表現されていて、何回も観てしまった。Rose2_2
 また、誰が書いたのかわからないが、解説もよくて、「まるで初々しい乙女がはじらうような姿」(右の白いバラ→)とか「ヨーロッパの夏の、黄金のような一日がこの絵に閉じ込められている」「甲冑の騎士に守られた王女のような」(うろ覚えなので、正確ではありません)とか、とても詩的だった。初々しい乙女なんて言われると、本当にそんなふうに見えてくるから不思議。
 美術展では、解説は適当に読み飛ばしてしまうのだけれど、今回は一つひとつ丁寧に読み込んでしまった。

 200年ほど前に、遠いフランスで描かれたバラを、この東京で浴びるほど観られる幸せ。
 繊細できれいな和みの展覧会みたいなイメージだったのだけれど、圧倒されっぱなしの絵画展だった。

 展覧会の詳細やバラの絵は、こちらのHP薔薇空間 でまだ見ることができます。

 展覧会は、およそ8割以上が女性。残りの2割の男性は、1割が女性に連れられて、1割くらいの方がひとりで自らの意思で……という感じ。
 こうしてまた女性ばかりが美しいものをたっぷり見て、心の財産を増やしていくのであろうか。

 さて、残念だったことは……。
 観終わって、久々にちょっと贅沢してドゥ マゴでお茶でもしようかと思ったら――テラス席にも本物のバラがたくさん植えられていてきれいだった――お目当ての「薔薇空間ケーキセット」はすでに完売とのこと。
 なんでも「フランボワーズとバニラのムースをホワイトチョコでコーティングし、薔薇を可愛くあしらってみました」というケーキだったらしく、展覧会の半券で割引になったそうだ。うー残念。
 しょんぼりして、ドゥ マゴは諦めて、もういつもいつもこのパターンなのだけれど、セガフレード・ザネッテイにてカプチーノとなった。

 ちなみに、ルドゥーテはこれだけの作品を残しつつも、晩年は散財癖のせいで、貧乏だったとか。きっと美しいものや美味しいものが好きで、ついつい贅沢しすぎてしまったに違いないと、私は勝手に思っている。でもまあ、今となってはどうでもいいことで(本人は大変だった思うが)、描かれたバラだけが気高く後世に残り続けている。

Rose  実物の絵を限りなく再現したという高品質印刷の画集、Les Roses バラ図譜
 14,700円と高価ですが、あんな素晴らしいルドゥーテのバラが手元に!と、逆に安く感じられます。
 と言っても、私は買っていませんが……中はじっくりと見ました。
 素晴らしい出来栄えの画集です。



 
 

 
 

 

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