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2007年11月10日 (土)

何もしたくない日

 朝から冷たい雨降りのせいか、何も……とまではいかないが、いろいろなことをする気力が出ない土曜の一日だった。
 掃除機かけもトイレ掃除も生協の注文書きもさぼった。
 ふだんは、毎日、晩ご飯が夜の10時すぎというような生活だから、たまに週末くらいだらだらしてもいいよな、と思いつつ、まあ、東京で働いていたらこういう生活は当たり前だよな、仕事があるだけマシだよな、と思ったり。

 それでも、映画を一本観た。『時をかける少女』。
 なんで今頃、突然放映していたのかわからないが、WOWOWでやっていたので。
 もちろん、原田知世主演の、1983年の角川映画。
 不覚にも涙……当時から好きだったけれど、今観るとこれは内田樹氏がよく言うような、「不在」「喪失」がテーマの映画なのだということに気づき、泣けてくる。
 自分には運命の人がいたはずなのに、今は失われている、出会えない、でも微かな記憶はある、というような、「冬のソナタ」的な……。
 息子夫婦と孫を失った老夫婦、自然を喪失した未来からやって来た深町君。
 やはり、「不在」「喪失」がテーマになっているからこそ、これほど普遍的な人気があるのだろうか、とか。
 今でもアニメでリメイクされているし。でも、この大林監督の『時をかける少女』は、独特の情感、叙情性がある。
 エンディングの、下駄履きで走ってゆく赤いカーディガンの原田知世は、少女が少女でいられた頃の最後の少女……とでも言いたくなるような、初々しさと美しさを全身に発散させていた。
 などと、なんだか「昔はよかった」と懐古趣味に浸るオヤジのような気持ちで、彼女をうっとり眺めてしまった。
 あのテーマ曲が、まったく色褪せていないことにも驚いた。

 それから、20代の頃、この映画のロケ地を訪ねて、尾道まで旅行したことまで、鮮やかによみがえった。
 あの1983年から、想像できないくらい、自分個人にも世の中にもあまりにいろいろなことが起きた。
 多くのことが変わった。自分の人生は少しはよくなったのだろうか。
 そもそも、よくなるとは、どういういことなのだろうか。
 なんとなく、もうこれ以上頑張れない……と思うことも多いこの頃。
 でも、人生は続いていくのだ。

(なんて心細くなってしまうのは、最近ちょっと疲れ気味からかも)

 と、とりとめもなく思いながら、何もしたくなかった一日が終わってゆく。
 11時半を回っているが、実は晩ご飯もまだ食べていない。

 紅茶でも飲みながら、冷凍のかぼちゃグラタンでも温めて夜食にしようか。
 そして、布団のなかで今、いちばんのお気に入りの小説、ポール・オースターの『トゥルー・ストーリーズ』でも読みながら、寝てしまおう。

 こういう日も、たまにはあっていいよね……と、誰に同意を求めているわけでもなく、ひとり呟く。


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コメント

『時をかける少女』大好きです。
大林監督作品が好きということもあるけど、決して上手ではない原田知代のぎこちない演技と、脇役の尾身としのりの達者な演技、青春の危うさが詰まったような世界が好きなのです。
このときのグレーの制服が最初は奇異に映ったけど、バックの尾道の風景を引き立たせる色、青春の、自分でもなにか分からない力を封じ込める色だったのかなと、最近では思っています。
長くなって失礼しました。たまには何もしない日があってもいいですよね!

投稿: ローズ・マダー | 2007年11月11日 (日) 05:56

ローズ・マダーさん
グレーの制服、確かにそうですね。
尾道の風景にしっくり合っていました。
黒や紺だと、「内面を封じ込める色」という意味合いからしたら、強すぎますよね。
あと、上原謙さんと入江たか子さんは、名演でした。
あれだけのシーンなのに、すべてを語っているようで。
あそこは、ちょっと小津の映画みたいでした。
「あれはもう、やめたほうがいいねえ……」(死んだ孫のものを買うこと)と言うシーンは、何度観ても泣けます。
『時をかける少女』は、記憶に残る名作のひとつだと思います。

投稿: Kate | 2007年11月11日 (日) 13:54

kateさん
ご無沙汰です。いつもブログは拝見しているんですが、コメントもせずに失礼しております。
だいぶ前になりますが、kateさんのブログを読んで、読み始めた『本格小説』がとても良かったし、内田樹さんの『村上春樹に~』も気になっていました。友人がその『村上春樹に~』をプレゼントしてくれると突然、今日言い出して、私が気になっていることは話してなかったので、ビックリ。読む運命にあるようです。
それからたまたまですが、私も気になっていたポール・オースター。これから読みたい作家の1人です。今度機会があれば、またブログで感想をお聞かせください。
なんとなく、先日のkateさんの書いていたシンクロニシティーって言うのを感じてしまいました。

投稿: うめめだか | 2007年11月11日 (日) 21:57

うめめだかさん
私もうめめだかさんのブログ、楽しく拝読しているのですが、コメントせずにごめんなさい。
ところで、『村上春樹にご用心』をプレゼントしてくれる友人がいらっしゃるとは、素晴らしい! なんか不思議な巡り合わせですね。
でもって、今さっきポール・オースターのことを書き終えた直後に、うめめだかさんから届いたこのコメントを読むことになり、びっくり。
必然性のある「偶然」かしら?
私が取り上げた『トゥルー・ストーリーズ』のテーマでもあるんです。
こちらも、おすすめです。

投稿: Kate | 2007年11月11日 (日) 22:15

はじめまして。
時をかける少女、私も大好きです。
原田知さんは”少女”という表現私も
当てはまるとおもいます。
今出演している。コーヒー・化粧品のCMに
してもいまだに、少女の面影が垣間見えるし
作ったイメージではない感じがします。

実は出版社に行ったときに、1度だけ偶然
原田知世さんを見かけました。
素朴なかんじでしたが、とてもかわいらしかったのを思い出します。
懐かしいです。

投稿: そら | 2007年11月17日 (土) 18:12

そらさん
原田知世さんは、大人の女性になった今も、
透明感のある美しさで、「少女」の面影があって私も好きです。
いつまでもあのままでいてほしいなと思います。

投稿: Kate | 2007年11月18日 (日) 16:31

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