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2007年5月13日 (日)

THE QUEEN

 

Img_0809  先週の連休に、「クィーン」を観た。
 1997年8月30日、ダイアナ元皇太子妃がパリで交通事故を起こし、死亡。
 その直後、エリザベス女王が葛藤を抱えながらどのような日々をすごしたか、当時政権を握ったばかりのブレア首相との関わりを中心に、1週間にわたって描いたもの。
 現役の女王であるし、いい加減なことは描けないだろうし、どのように創ったのだろう?と不思議だったのだけれど、パンフレットにある脚本家のインタビューによると、以前創ったブレア首相をテーマにした映画で、関係者に取材し信頼関係を得ていたので、今回もそんなふうに王室や首相関係者などにきちんと取材を重ねたうえで、創ったそうだ。

 初めは、ダイアナは民間人に戻ったのだから、王室は関係ないと一線を引いていたエリザベス女王だが、ブレア首相のアドバイスにより、国民の感情を無視できないと判断、追悼のスピーチをすることを決意する。 
 また、終始、母親を失ったふたりの王子を守ろうと心を砕いているところが、印象的だった。

 とにかく、ヘレン・ミレンの女王ぶりが素晴らしい。
 単なるそっくりさんではなくて、エリザベス女王の内面を見事に表現していた。感情に流されない毅然とした対応から立ち居振舞いに至るまで、すべてが。
 ヘレン・ミレン自身も演技している最中は、鏡の前を通りかかると「いったいこの人は誰かしら。あらいやだ、わたしだわ」なんて思い、どこかで女王の写真を見るたびに「ここにいるのはわたしじゃない。このとき、わたしは何をしていたのかしら」とまで思うようになったらしい。
 確かに、映画を観ているこちらも、ヘレン・ミレンが演じている女王を観ているというより、女王そのものに思えてきて、あら、本物のエリザベス女王って本当はどんな顔だっけ?なんて、思ってしまうのだった。

 今思うと、ダイアナへの世界的な熱狂は異常だった。
 脚本を書いたピーター・モーガンは「彼女は感情的に混乱した不安定で悲劇的な人生を送った女性として受け止めれられていて、もはや偶像的な存在とは見られていない」「結局彼女は英国の何ものも変えることはできなかった」と語っている。
 本当にそうなのだろう。
 彼女はあまりに華やかで美しかったし、亡くなったのも離婚からわずか1年後で、36歳という若さで、美しさの絶頂期だったから、あれだけ騒がれたのだろうけれど……まあ、それだけのことだった、ということだろう。
 あのロイヤル・ウェディングを、高校から飛んで帰って来て、テレビの前でかぶりつきで見ていた私ですが……年を重ねてドライ(?)になったもんです(笑)。

 それにしても、こんな映画が創られるなんて、英国の王室ってオープンだなあと思う。
 この映画でも、労働党のブレア首相は、自分とは価値観が違えども、女王のことは尊重しているのがよく伝わってきた。 
 階級や立場や価値観の違いを超えて、互いを尊重しつつ、つながっていくのが大人の社会なんだろうな……と、フリアーズ監督のメッセージがこんなところに込められている気がする。 
 随分前に観て、やはり凄く好きだったフリアーズ監督の「マイ・ビューティフル・ランドレット」も英国で暮らす移民と英国人男性がゲイのカップルになり、ふたりでランドレット(コインランドリー屋)と開くという物語だった。 

 スコットランドのお城のシーンもきれいで、女王が自らランド・ローバーを運転するとか、意外な一面も見えて、おもしろかった。
 今までダイアナばかりに光が当てられ、あまり正面きって語られることのなかったエリザベス女王に対する、新しい見方を提供してくれる興味深い映画だった(だけど、この映画の中でも、チャールズ皇太子は存在感がなかった。偉大な母と美しい妻に挟まれて、いろいろ辛いことも多かったのであろうと想像させる描き方/笑)。
 王室廃止論もあるそうだが、当分はなくならない気がする。
 無駄、と言えば無駄なんだろうけれど、歴史のある美しい無駄は、それなりに意義があるのではないかと……。

 

Img_0819  2002年、エリザベス女王戴冠50周年を記念して販売された、Golden Jubileeという紅茶。
 当時、新宿伊勢丹で購入。
 ちなみに、Whittardというブランドでダージリンとアッサムのブレンド。
 でもそれほどおいしくなかったような記憶が(笑)……このブランド、日本の水には合わないんじゃないかと思う。

 缶は未だに大事に飾ってあります。やっぱり、私って英国王室ファン?

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コメント

Kateさん、こんばんは。1981年からの「ダイアナ・フィーヴァー」は、今思うと異様でしたね。凄まじかった。極東の島国でも、ダイアナ・カットなんかが大流行していましたものね。マス・メディア時代において、あれほど「プリンセス」のイメージを体現した美貌の人はいなかったし、これからもなかなか現れないように思います。童話なら、王子様とお姫様は末永く幸せに暮らしました、となるところですが、現実政治の坩堝である王室では、そうはならなかった。チャールズ王太子との別居、離婚、事故死、国民葬、忘却という経緯を思うと、複雑な感慨が湧き起こって来ますね。

僕は英国王室については詳しくないのですが、一般的に言って、貴人と俗人は非常に異なったものだと思います。躾や訓練が違うし、何より感情、常識が違うでしょう。その意味で、エリザベス2世やチャールズ王太子など生粋の王室人の常識感覚が、ダイアナ妃にはついに理解できなかったのだと思います。特に、エリザベス2世とは、経歴や言動から考えても、あまりに隔たりがあり過ぎたような気がします。言うまでも無く、王室人として、女王として、傑出していたのはエリザベス2世であって、ダイアナ妃ではなかった。「筋を通そうとした」のは、エリザベス2世だったのだけど、ダイアナ事故死の際の世論は、それを押し流してしまったのだと思います。

そうして、時が経ち、現在こうした映画(エリザベス2世の再評価)が製作されて、広く世界で公開されるということ自体が、Kateさんがおっしゃるように、英国王室という制度が今も、そしてこれからも長く、人々に支持され、存続していくことの証なのだと思います。

それにしても、Golden Jubileeの容器、ステキですね!

投稿: 灯 | 2007年5月15日 (火) 21:46

灯さん
丁寧なコメントをありがとうございます。
エリザベス2世は、セックス・ピストルズやらザ・スミスらに歌われましたが、そういう反抗のシンボルとなりうるのは、それだけ存在が大きいということですよね。
疎まれ憎まれつつ、愛されているというか(英国人ではないので、その辺の複雑な感情は完璧には理解できませんが)。
といっても、最近は、王室にそれほど大きな意味を見出している人は少ないそうですが。

それにしても、現在81歳だそうで……当分、チャールズ皇太子の出る幕はなさそうですね(笑)。

投稿: Kate | 2007年5月15日 (火) 23:35

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