家づくりは、はじめてですか?
――もう西洋館はおやめですか。
――いやあ、建築家に相談したら、今はもうあんな古くさい西洋館は流行らない、何風だか知らないが白い四角い箱みたいなモダンが家がいいんだって言われてね、そんな菓子箱みたいなとこに住みたかあないから、ふつうの日本の家にしてくれって言ったんだよ。建って半年ぐらいだ。
『本格小説・上』(水村美苗著/新潮社文庫)より
『本格小説』という小説のなかで交わされるこの会話。時は昭和29年。戦後10年も経っていない頃。建築家に依頼できるような人は、ごくごく一部の階層の人たちだったことだろう。
家というものは、地元の「大工」が作るものであった。
時は流れて、今は、ハウスメーカー、工務店、建築家と選択肢の幅がぐっと広がった。
でも、そのわりには、町を見渡すと、お仕着せの小ぎれいなちまちまとした建て売りばかりがひしめき合い、とても美しいとは思えない。また、腕のいい大工がどんどん減っているとも聞く。
日本の家はどうなっていくのか?
どうしたらいいのか?
と、前置きはこの辺にして。
今年いちばん楽しんで笑えたTVドラマ「結婚できない男」。その主人公が建築家だった。で、ドラマに制作協力されたのが、業界唯一完全独立系建築プロデューサー朝妻義征さん。お互い、ブログを通じて知り合い、朝妻さんが自ら書かれた冊子をわざわざ送ってくださった。
この冊子、ちょっと変わっている。
建築プロデューサーがお客さんのために配る冊子というと、連携している建築家たちのプロフィールや作品が載っていたり、それこそメーカーの営業マンや広告代理店のコピーライターがクライアントにプレゼンテーションするために提示するような、パワーポイントを屈指したフローチャート満載のカラーの資料!なんてものを想像する。
しかし、これは全然違う。フローチャートもないし、カラーページもない。文字だけである。
それも、家づくりに迷う主婦のもとに、家づくりガイドの変なオジサン妖精が現れるところから始まったりする(笑)。
でも、読んでいくうちに、そうだよね、まずここから始めないといけないんだよね、ということに気づかされる。建築家の作品を見る前に、情報の洪水を浴びる前に、まず自分が何を求めているのか、必要としているのかを見極めなければならないのだ。
――彼女は自分が欲しい家は本当にこんな家なのか、よくわからなかった。本当は“何か”もっと別のものを求めているのではないかと感じた。
――しかし、その“何か”を未だに見つけることができない。
自分がその“何か”を探していることさえはっきりとは気づいていないのである。
と本文中にもあるけれど、なんだかちょっと「文学的」な問いかけだ。
家を建てるということは、外側に向かって行動していくようで、実は自分の人生を振り返り、見つめ直すことなのかもしれない。
また、家族とどう関わっていくか、ということも突き詰めざるを得ない。特に、夫婦間で齟齬があったりすれば、いい家はつくれない。
後半、主人公の主婦は、建築家に依頼するのをためらっていたけれど、いざ建築家と話してみるとすっかり感心して、
なんか私たちよりもよっぽど私たちのことがわかっているみたい。
と、こんな感想をもつようになる。
まず必要なのは、カタログではなく、自分たちが何を求めているか深く掘り下げること、内面と向き合うこと。
この一風変わった冊子は、そのためのガイドブックだ。
家づくりで迷っている方、ハウスメーカーに行く前に、建築雑誌を読み漁る前に、まずこの冊子を読んでみては、いかが?
朝妻さんのHPから申し込みできます。
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コメント
ご感想をエントリー頂きましてありがとうございます。
大変光栄です。
お見苦しいところも多々あったと思いますが
最後までお読み頂きましてありがとうございました。
でも、実のところは今か今かと
ドキドキしながら待っておりました。
投稿: 建築プロデューサー 朝妻 | 2006年12月18日 (月) 17:55
朝妻さま
感想をUpするのが大変遅くなり、申し訳ありませんでした。
「結婚できない男」スペシャルを期待しつつ(笑)……
今後もどうかよろしくお願いいたします。
投稿: Kate | 2006年12月18日 (月) 22:56