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2006年12月10日 (日)

トーチソングトリロジー

Torch_read 先月のことになってしまうけれど、十数年ぶりくらいで芝居を観た。
 「トーチソングトリロジー」(パルコ劇場/11月29日)。
 あるツテでいい席が取れるとのことで、同じ職場の一回り下のAさんと一緒に行くことになった。
 行ってみようと思ったのは、ストーリーに惹かれたのと新進気鋭の若手俳優・長谷川博巳が出演するため。テレビには出ない人なので、いつか生の舞台を見たいと思っていた。
 主演のアーノルドは、篠井英介。NYのナイトクラブで働くゲイの役。
 そのアーノルドに、バイセクシュアルのエド(橋本さとし)、年下の美しい恋人アラン(長谷川博巳)、エドの婚約者ローレル(奥貫薫)、アーノルドの養子になるデイビッド(黒田勇樹)、そしてアーノルドの母親(木内みどり)が、さまざまに関わってゆく。

 人を愛するということ、人と関わることの困難さと喜び、喪失感とどうやって向き合っていくか。

 とにかく、篠井英介さんが素晴らしかった。幕が開き、ナイトクラブのドレッシングルームで客席に向かってひとり語りを始めるのだけれど、その瞬間に、一気に引き込まれる。
 DRESSING ROOMと書かれた移動式の台の上で、舞台道具と言えば椅子くらいなのに、そこはNYのナイトクラブのドレッシングルーム以外のどこでもない空間となる。
 ドレス姿の篠井英介さんは本当に艶やかで美しかった!(美輪明宏の後継者は彼?!)

 長谷川博巳さんも、スレンダーでしなやかな肢体、シャープな顔立ちのなかにも少年っぽい雰囲気があって、アラン役にぴったり。もちろん、容姿だけではなく(笑)、演技もよかった。傲慢さと繊細さが同居する、若く美しいゲイの青年を巧みに演じていた。男同士のラブシーンもあり、難しい役だと思うけれど、彼が演じると素直に見られる。すっかりファンになった。

 3時間という長い芝居にも関わらず、飽きる瞬間がまったくなく、役者の底力というものを肌で感じた。
 人間関係の本質をえぐるような痛みを伴なう芝居でありながら、コミカルで笑えるところもたくさんある。
 演出も新鮮。生のピアノの弾き語りもあって本当にナイトクラブの雰囲気だったり、また、例えば、傾斜している大きなひとつのベッドの上で、2組のカップル、アーノルドとアラン、エドとローレルが並んでいるシーン。
 それは、「別々の部屋」で、「それぞれのベッド」の上で、2人ずつ話しているという状況を現していたりする。2組のカップルの会話が個別に交わされるのだが、時折、絶妙なタイミングで、その会話が絡み合う。

 終演後、Aさんと。
「たまには、いいものを観ないとねえ」
 とふたりして言い合う。私たちの職場は、プラプラしているジイサン連中のフォローとかウツになってしまった人のフォローとか、実務以外に気苦労が多くて大変なんである(どこでも多かれ少なかれそうだと思うが……それにしても、なことが日々多し)。
 劇場を出たのは、すでに10時半を回っていた。渋谷のセガフレード・ザネッテイでパニーニを食べようと向かうも、「パニーニは10時半で終わりです!」と店員さんにマニュアルチックに冷たく言われ、ショックを受けつつ仕方なく冷たいサラダとプロセッコを頼んだ。

私「なんかね、今の私の人生のテーマにぴったりはまるような気がして」
Aさん「こう、胸が痛くなりますよね」
私「アタシみたいなゲイのオカマのことなんか世間の人たちにはどうでもいいのよ、っていうセリフがあったじゃない? ゲイのオカマを40代のシングル女性と言い換えてもいいような気がしたなあ」(アーノルドのそのセリフの背景には、単なる卑下ではなく、ある悲しい出来事がある)
Aさん「そっ、そんなー、そんなこと言わないでくださいよお」(ややリアクションに困るAさん/笑)。

私「だけど、失ったり傷ついたりしても、やっぱり人は誰かを求めずにはいられない、ってことなんだろうね」
Aさん「うーん、そうですね。でも、私は今、誰も求めていないんですけどねえ……」
私「そうなの? うーむ……」(と、今度は私がリアクションに困る/笑)。

Aさん「それにしても、生の役者さんの演技って凄いですね。舞台のテレビ中継とか見ても、あまり感動しないのは、どうしてなのかな?」
私「そうなのよね、おもしろくないのよね。なぜなんだろう? ああ、そうだ、きっと、役者さんは、芝居のなかで役を演じているんじゃなくて、その役を生きているからじゃない? だから、ライブじゃないと感動できないんだよ」

 帰りの電車のなかで、そうかそうか、寄る辺のない40代シングル女性は、女装したオカマのメンタリティに近いのか……などと、プロセッコ1杯だけでちょっとほろ酔い気味の頭というか心で、ぼんやりとまた思ったり(笑)。

 後日、篠井英介さんのインタビューを読んだ。ここ→e+Theatrix!

アーティスト、たとえばミュージシャンを目指す人、絵描きになりたい人、小説家になりたい人、俳優になりたい人。みんな、なかなか大変なんですね、生きて いくのが。そういう夢追い人が、社会と折り合いをつけて、家族、自分自身とも折り合いをつけて生きていくのは本当に大変。それは、ゲイの生き方のしんどさ みたいなものとも、ちょっと共通項があって。――篠井英介

 なるほどと思った。私が昔から、ゲイの話に惹かれるのも、何かと折り合いのつきにくい自分と、どこか共通項を見ていたからかも。

 トーチソングとは、片思いや失恋をうたった歌のこと。
 忘れて前に進むことも大切だけれど、トーチソングも時にはいい。
 復讐や恨み言でない、この芝居のように美しいトーチソングであれば……。

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コメント

こんにちは~。
トーチソングトリロジー」はだいぶ昔になりますが
映画で観ました。
「心の傷は指輪のように少しずつ身体の一部になっていく」というセリフが印象に残ってます。
映画が良かったので、その元になっている舞台にも興味はあるのですが、舞台そのものが苦手なのでちょっと躊躇います。
んー、でも良かったのですね。
機会があったら観劇、挑戦してみようかな。

ところで「Dr.コトー」いいですよね。
コトー先生役の彼、「北の国から」の純くん以外の当たり役に恵まれてよかったねーと思っています。

投稿: rei | 2006年12月11日 (月) 11:04

reiさん
コメントありがとうございます。
実は、私も演劇ってちょっと苦手なのです。
でも、どうしてか、この「トーチソングトリロジー」は
むしょうに見たくなったのです。
だから、あれこれいっぱい見るタイプでもないし、
特に贔屓の劇団もないのです。
だけど、今回は、役者さんの生の肉体というか、
存在感に圧倒されました。


ところで、映画になっているとは知りませんでした。
探して、ぜひ見てみたいです。


>「心の傷は指輪のように少しずつ身体の一部になって
>いく」というセリフが印象に残ってます。


これって、アランの死を嘆くアーノルドへの、お母さんからの言葉でしたっけ?
凄くいい言葉ですよね。
再び、じんとしてしまいました。


それから、吉岡君、ほんとそうですね!
何でもソツなくこなすタイプではないけれど、
ひとつ当たると、息が長い感じですよね(笑)。

投稿: Kate | 2006年12月12日 (火) 00:26

そうです。確かお母さんからアーノルドへの言葉だったと思います。
最愛の人を失ったという心の傷は決して消えることはないけれど、指輪のように身体の一部になっていく・・・
とかそんなセリフだったと。
映画はもう10年くらい前に、アラン役のマシュー・ブロデリックが好きでシャンテシネかシネスイッチで観たんですが
マシューより主演男優の迫力というか鬼気迫る演技に心を動かされました。
今DVDになっているようですね。
主演男優の方が脚本も書いてるみたいです。

そう吉岡君!DR.コトーもシリーズ化してるから息長そう。
「北の国から」では暗い役でなんかこのイメージがずっと付いちゃったら可哀想と思っていたんですが
コトー先生は純君と違って腕も良ければ性格も良く
何よりも島の人々が皆キラキラと明るく優しいのが良いですね。
北海道と同じく島民は皆決して裕福ではないのに明るさがある。
これは風土のせいでしょうか。。
同じく「北の国から」で吉岡くんの妹の蛍ちゃん役をやっていた女優さんはドラマの薄幸なイメージのままなんか消えてしまいましたね。残念。

投稿: rei | 2006年12月12日 (火) 11:55

reiさん
トーチソングトリロジーのDVD探してみます。


蛍ちゃんは、実生活では確か結婚してお母さんになった
と思うのですが……最近あまり見ないですね。
Dr.コトーは、「北の国から」と共通項も多いけれど、
やはりおおらかな感じがして、いいですよね。
「北の国から」みたいにロングシリーズになるかも?!

投稿: Kate | 2006年12月12日 (火) 23:24

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