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2006年9月21日 (木)

結婚できない男 最終回――あなたは、ほんとのひとりぼっちを知らないのよ

 とうとう「結婚できない男」が最終回を迎えた。
 見始めた時は、阿部寛演じる桑野信介のことを、なんて憎たらしい男なんだ!なんて思いながら見ていたのに、終わる頃にはすっかり虜になっていた。
 早坂先生(夏川結衣)やみちるちゃん(国仲涼子)が、嫌だ嫌だと言いながら、引き寄せられていったのとおんなじに(笑)。
 まあ、信介の虜になった……というより、このドラマそものものに、なんだけど。 

Img_0444 最終回の冒頭は、いきなり「ひとり手巻き寿司」のシーン。
 その他、お馴染みステーキ屋、焼き肉屋でのおひとり様シーンもあり、指揮マネも椅子から立ち上がるほどの熱演で、信介ひとりシーンの集大成といった感じ。
 最終回らしくサービスたっぷりの演出だった。

 

 それから、金田(金田、と言うだけで、なんだか=笑)。
「なんだ、いいヤツじゃないか」という、信介の一言がすべてを語っているけれど、このドラマは本当に心底嫌なヤツ、というのが出てこなかった。
 私は、金田は、タダの放蕩息子でニセ建築家だったとか、耐震偽装問題で逮捕されるとか、そんなのを想像したりもしたんだけど……そう言えば、作家の保坂和志氏が、人が創作しようとすると、すぐネガティブな方へ流れやすくなり、嫌な人ばかり出てきたり、結果、陳腐な設定に陥りやすい(最近の傾向だと、不倫とかリストラとかニートとかリストカットとか)というようなことを書いていたけれど、案外と私もそうかも知れないなあと思った。
 このドラマみたいに、皆、ちょっと変なのだけれど、どこか愛すべきところを持っている人たちがたくさん登場する小説なんかを書いてみたいもんです。
 金田も、実はこっそり焼き肉屋で「おひとり様」をしているんだけど、バーで女性と一緒の時に見せるどの表情よりも、いきいきとしていて楽しそうだったのが笑えた。
 公式HP に、金田を演じた高知東生さんのインタビューがあるのだが(TOPICのなか)、「実は金田こそが結婚できない男であり、自信がなく、プレイボーイのように見えながら、彼の方が本当は女に次々と振られているのかも知れませんよ」ということを言っていて、なるほど、そうだったのか!と思った。

 で、最終的には、みちるちゃんはいくらなんでも「お子様」な感じだし、あり得ないよねえと思っていたら、やはり早坂先生だった。
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「私たちの言葉って、ドッジボールだったような気がします。
相手にあてて、終わり。
私は、キャッチボールがしてみたいです、あなたと」

 と信介に語りかける早坂先生。
                               信介の言葉に涙ぐんで……いたのも束の間

 勇気をもって先に歩み寄るのは、女性である早坂先生の方だった。
 そして、ようやく心を動かし始めた信介も早坂先生が住みたい家の構想を練り始め、
「あなたを好き……なのかも知れません」
などと告白し、早坂先生を感動させるのだが、だが……。
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      早坂先生のために必死で家のスケッチをする信介→
 
 その告白の直後、でも、ふたりで暮らす家のイメージが浮かばないから、結婚はできないだの何だのと小理屈をこね始める。
「賃貸でも何でもいいじゃないですか!
結局、自分のことばっかりじゃないですかっ」

 と激怒する早坂先生(笑)。

 ハッピーエンドっぽく涙を誘いながら、くるりと一回転、一筋縄でいかない展開がいかにもこのドラマらしかった。
 Img_0441でも、すったもんだの挙げ句、ふたりで夜道を並んで歩いて行く。
 結婚式のウェディグドレスシーンなんかではなく、こんなふうに普段着のまま、スーパーのレジ袋を下げて一緒に歩いて行く、というのが、このドラマに相応しい終わり方だったように思える。

(早坂先生の定番メニューのロールキャベツ、私も結構好き。信介のアドバイスどおり/笑、今度は圧力鍋でつくってみようかと思う)

 ところで、草笛光子演じる信介の母親も結構いい味を出していた。
 初めは、息子の結婚ばかり心配している過干渉な母親か?と思わせながら、そこそこ距離を取りつつ、わりと冷静に息子を見つめているのがよかった。
 そこで、最終回に出てきたのがこの言葉。
「あなたは、ほんとのひとりっぼちを知らないのよ」
 深い。「本当の孤独を知った人間こそ、他者と共生できるのだ」と内田樹氏も著書のなかで言っていたっけ。

 さて、このドラマで特に私が好感をもったのは、信介の職業、建築家というものをきちんと描いていたところ。
 ドラマで描かれる主人公の職業なんて、まるでアクセサリーのような位置付けであることが多いなか、このドラマは、主人公の生き方とか生活にしっかりリンクしていた。
 Img_0442_1信介と早坂先生を結びつけるのも、家を巡ってのやり取りだった。
 
 だから、最後のシーンでは、テーブルの上に置かれた家のスケッチと模型がアップで映されるのだ。
 そして、いつの間にか二匹になった金魚も!。

 

 

 
 協力された建築プロデューサー 朝妻さん 、お疲れさまでした。
 たくさんの人が楽しんだドラマだと思います。ありがとうございました。
 工事中の物件を探して、撮影の許可を得るなど、いろいろご苦労があったのでは?と思います。
 半年後くらいに、2時間スペシャルを希望します!
 その際もぜひ朝妻さんのアドバイス入りで(って、勝手に決めてますが/笑)。

 などと、あれこれ語ってしまいましたが……。
 あー、でも終わっちゃったよ、どうしよう。寂しい!という気持ちでいっぱい。
 
 そして、名優ケンちゃん(本名こつぶ)ともお別れ。
 ケンちゃんもお疲れさま。
 このドラマで、大人気らしいけど、あんまり騒がれないといいなあ。
 いつまでも元気でね。
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コメント

期待を上回るすてきな最終回で、気が付くと自分でもびっくりするほど気持ちを入れ込んで見ちゃいましたよ。桑野が孤独と他人への愛に目覚めてハッピーエンド、という展開はじつにオーソドックスで驚きはなかったんだけど、桑野の気持ちが変化していく過程に、じつに説得力がありました。金魚、ちゃんと気が付いたのね。さすが!^_^

投稿: beeswing | 2006年9月22日 (金) 04:22

終わっちゃいましたねー。
私も毎回楽しみにしていただけに、終わっちゃって淋しい気持ちです。
金田も「けっこういいヤツ」で良い味だしてましたよね。

>人が創作しようとすると、すぐネガティブな方へ流れやすくなり

確かにそうですね。
絵でもそうなんですが、ネガティブなものグロテスクなものを描く人ってけっこういるんです。
ネガティブなものってインパクトがあるものに仕上がるので。
でも保坂さんではないですが『醜いものの方にリアリティを感じる自分を見つけたら、逃げてるのかな?と疑って下さい。みにくさに注目するリアリズムは時々
怠惰のもうひとつの姿なのです』と言った方がいます。
きれいなだけなものって嘘くさいですけど
嘘くさくなくきれいなものを造る方が難しいんですよね。
うまく言えないけど嘘くさくないハッピーエンドみたいな。
kateさんは小説も書かれるのでしょうか?
楽しみです。

追伸:「ゆれる」のラストは私好きです。
たとえ、あの笑顔の後お兄ちゃんがいなくなっていても。

投稿: rei | 2006年9月22日 (金) 11:50

どうも!朝妻です。

>工事中の物件を探して、撮影の許可を得るなど、いろいろご苦労があったのでは?と思います。

さすが!その辺のことをお分かり頂けると
やった甲斐があります。

>半年後くらいに、2時間スペシャルを希望します!
 その際もぜひ朝妻さんのアドバイス入りで

まあ、その時にも製作側からお話があれば是非やりたいと思っています。
(でも、あれこれとうるさいことを言っていたからもう来ないかも・・・)

何はともあれ一段落です。
しばらくは本業に専念します。

もしよろしければ、ごくごく一部(内輪ですが)でご好評を頂いております拙書『家づくりは、はじめてですか?』をお読み頂きご感想などを頂けましたら嬉しいです。

ご迷惑でなければお気軽にお申し付けください。

では、またお邪魔します。

追伸
ケンちゃん(こつぶちゃん)は私には全くなつきませんでした。ちょっぴりショックでした。(涙)

投稿: 建築プロデューサー 朝妻 | 2006年9月22日 (金) 15:12

beeswingさん
金魚は、朝妻さんのブログを読んで、え?と思い、
2度目に見直してから気づいたのでした。
あー楽しみがなくなっちゃったよ~。
しかし、これでレポート書きからも解放されると思うとほっとするような、でもやはり寂しいような。

投稿: Kate | 2006年9月22日 (金) 23:24

reiさん
確かに世の中、楽しいことばかりではないから、ネガティブなものを見つめる必要もあると思います。で、真剣に掘り下げたものは人を感動させるんだろうと思います(『残酷な神が支配する』みたいに)。
何にせよ、上っ面でつくったものはダメだということなんでしょうね。
とにかく、このドラマみたいに人を笑わせたり、ほんわかした気分にさせるのって、いいなって……でも、そういうものをつくるのは、結構難しいものだと実感しています。

投稿: Kate | 2006年9月22日 (金) 23:31

朝妻さん
「TVドラマ 結婚できない男」のカテゴリーをつくって、今までの記事を入れたら、10本もありました。全12回でしたっけ? いっそのこと12本全部書けばよかったかなあと。

近々、「結婚できない男」最終回を惜しんで、リアル建築家特集の記事をUpします(といっても、ほんのひとりだけの特集ですが/笑)。

『家づくりは、はじめてですか?』
おもしろそうですね。もしかして、送っていただけるとか?! 時間がかかるかも知れませんが、読後、このブログで感想を書かせていただきますよ。

そうそう、ケンちゃんは、阿部寛さんには相当なついていたんでしょうか?
というか、一心同体と言ってもいいくらいに、仲良さそうに見えました。
草笛光子さんがケンちゃんをしみじみ眺めて、
「あなた、誰かに似てるわねえ」と呟いたのには、笑いました。

投稿: Kate | 2006年9月22日 (金) 23:41

どうも、朝妻です。

冊子、お読み頂けるのでしたら
是非送らせていただきます。

eメールまたは私のBLOGのご意見ご質問のところから
お申し込みください。

お待ちしております。

投稿: 建築プロデューサー 朝妻 | 2006年9月23日 (土) 00:36

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