« ゲド戦記――ファンタジーの力 | トップページ | ティーポット――モノのカタチ »

2006年7月19日 (水)

結婚できない男――ほっといてください。

 阿部寛主演のドラマ結婚できない男 が、面白過ぎる!
 仕事の帰り、総武線の三鷹方面行きを待つホームの定位置があるのだけれど、私が立つちょうど目の前に、このドラマの宣伝のパネルがあったのだ。
 阿部寛の顔のアップだけのシンプルなデザイン。そして、小さくサブタイトルがこう入っていた。

 ほっといてください。

 なんか、この「ほっといてください」が、私の中でやけにウケてしまい、これは絶対見なくちゃと思い、初回から見ている。

 阿部寛が演じる主人公の独身40男、信介の職業は建築家。
 ナルシストで、他人のことと、他人からの視線が気になって仕方ないくせに、虚勢を張って気取っている。
 口が悪く、コミュニケーションの取り方が下手。だけど、それは決して自分が悪いとは思わず、相手の方がバカだと思う。
 うーーむ。いるんだよね、何かと他人をコキ下ろす男の人。
 私は今までの人生で、いっぱい見てきたぞーと思う。
 で、ひとりで旨いもんを喰い、ひとりで高級ステレオで大音量のクラシック音楽を堪能し、聴く時は指揮者の真似しちゃうし(笑)、ひとりで広いきれいなマンションに住み、フランク・ロイド・ライトの照明なんてあって。で、空気が澱むからと他人を部屋に招くことは嫌う。
「独身なら稼いだ金は全部自分のもんだ。結婚なんかすれば女房と子どもに食いつぶされるだけだ」
 そんなことを言って、既婚者をバカにし、自分は独身貴族を気取っている。
 そう、彼はまさに貴族なのだ(笑)。
 だけど、その貴族っぷりが、第三者から見るとすんごく滑稽なのだ。
「あんな人と結婚したいと思う女の人、いますかねえ」
「いないわよねえ……」
 などと女同士のお喋りのネタにされている。

 結婚というものは、いつも女性に沿って語られがちだったけど、ようやく男性への視点も出てきたかという感じで、なんだか小気味のよいドラマだ。

Img_0292 
←ひとりで「人生ゲーム」(それも1968年の復刻版)に興じる信介、曰く……「必ず結婚しなきゃいけないのが、このゲームの欠点だな……」

 そう、現実でも、やれ非婚だ、少子化社会だと騒がれ、何かと女が悪い、女のわがままだ、みたいな言われ方をされがちだけれど、それは本当は30代、40代の男性が腹を括って女性と生活を分かち合おうとしないからじゃないかと思う。
 特に40代の男性はかつてバブルの恩恵も受け、不景気になったとはいえ、その後、よほど人生を踏み外しでもしない限り、今の若い人たちと比べたら、相当リッチなはずだ。
 車やオーディオを部屋のメインにもってきた、スタイリッシュな建築家住宅に住むシングル男性――そんな雑誌の記事を本当に最近よく見かけるのだ。

 ドラマのなかでも信介は、「ひとりでお金溜め込んで、どーすんですか?」なんて言われている。まあ、個人住宅の設計なんて、本当にそれほど儲からないのは事実。
 私は、個人住宅を設計する建築家の方に何人か取材したことがあるから、よくわかる。設計料は施工料の10数パーセントくらいだけど、それに費やす時間とエネルギーは相当なもの。相手が個人だから、そう、ドラマにもあったように、常に「あと100万、安くならないでしょうか……」などと言ってくる施主とのせめぎ合いなのだ。その辺の建築家事情も結構きちんと描かれているのも好感が持てる。家を建てたい人に建築家を紹介する、建築プロデューサー的な仕事も最近は実際に増えているし(ドラマでは高島礼子がこの役で、これもなかなかはまっている)。
 話が逸れたが、いくらそれほど儲からないとはいえ、ドラマのなかの信介は自分にしかお金使わないわけだから、自由に使えるお金、可処分所得というやつは多いに違いない。
 
 ま、それはさておき。
 このドラマの初回、気取りやの信介が腸閉塞か何かで下血して、病院へ運ばれるシーンがあった。女医を演じる夏川結衣(早坂先生)が、「診察するから、ズボンを下ろしてください」と言っても、彼のプライドが邪魔をし、それを嫌がる(病人のくせに!)。
 押し問答を繰り広げ、早坂先生がたまりかねて「私は医者ですよ、いい加減にしなさいっ!」と叱り飛ばしながら、彼のズボンを引きずり下ろす。
 そこで、カメラが切り替わると思いきや、ズボンを脱がされ、丸見えになったお尻のシーンが……かなり長い間、映し出されていた!
 痛さと恥ずかしさ?故か、診察台に横たわりながら涙を流す信介。
 同じ勤務先のMさん(30代前半独身・女)は、うとうとしながら見ていたらしいけれど、このシーンで、
「わ、阿部ちゃんのお尻!」
 と一気に目が覚めたそうだ(爆)。
 なんというか、そんな捨て身の阿部寛の演技には、大いに拍手したい。
 コミカルな役は演じられても、お尻まで晒せる俳優は彼をおいて他にいないだろう。
 私的には、ジダンの頭突きより、衝撃度の高いシーンであった(比べるなって?笑)。

 そして、阿部寛がお尻見せた!という事実以上に、このシーンは、象徴的な感じがするのだ。
 上げ底された男の虚飾や虚勢を脱がしてやろう、というようなね。
――「お尻」を連発しちゃいました。失礼!――

 というわけで、このドラマの阿部寛は、『恋愛小説家』とか『恋愛適齢期』のジャック・ニコルソンを彷彿させるところもある、と言ったら、褒め過ぎか?
 人をイラつかせる厭味な役を、本当は二枚目でいい男の阿部寛が余裕たっぷりに演じているのがいい(あの長身を、やや前のめり気味にして歩く演技の細かさなど素晴らしい)。
 やな男なんだけど、それこそ、先の映画のジャック・ニコルソンのように、変わっていく可能性はありそう。
 「本当はほっとかれるのは寂しい」という展開になるのかな?
 設計の仕方なんかに、奥底は悪い人じゃない、というのは見えているのだけれど。
 でも、あまり突然いい人になってしまったら、面白くないかも知れない。

 建築事務所の若いアシスタント役は、塚本高史クン。
 ねっとりとした演技をしている阿部寛とは対照的に、いかにも今時の男の子という感じで、軽妙な実にいい味を出しています。
 ちゃっかりしているOL役の国仲涼子も楽しいし、女医役の夏川結衣もしっかりしているけれど、可愛らしさも失わない大人の女性を演じていて、いい感じ。

 というわけで、今シーズンイチオシのドラマは、『結婚できない男』。
 これは見ないと、損しますよ!

 

|
|

« ゲド戦記――ファンタジーの力 | トップページ | ティーポット――モノのカタチ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/84419/2714483

この記事へのトラックバック一覧です: 結婚できない男――ほっといてください。:

« ゲド戦記――ファンタジーの力 | トップページ | ティーポット――モノのカタチ »