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2006年7月24日 (月)

ワーキング・プア――働いても働いても豊かになれない

 NHKで「ワーキング・プア――働いても働いても豊かになれない」という特集番組をやっていた(7月23日21時放映)。

 イギリスのジャーナリスト、ポリー・トインビーが『ハードワーク――低賃金で働くということ』という本のなかで述べていた状況が、日本でもほぼ同じ形で進行していることがよくわかった(過去のブログで、この本について詳しく書いています。こちら をどうぞ)。
 ワーキング・プアとは、働く意志があるのに職に就けない、あるいはアルバイトなどの非正規雇用にしか就けず低賃金で、生活保護レベル以下の暮らしを強いられる人々のことを言うらしい。
 働いても働いても貧しい。その負のスパイラルから逃れられない。
 いつからこんな言われ方をするようになったのかわからないけれど、凄くよく言い当てている言葉だ。

 番組のなかでは、交通費がないため面接に行けず、職に就けない34歳のホームレスの男性や過疎化が進み農業では食べていけない家族(秋田県)、職人としての腕は持っているのに街がシャッター街と化し、売り上げがほとんどない仕立屋さん、リストラされてガソリンスタンドのアルバイトを3つもかけ持ちしている50歳のシングル・ファザーなどが登場していた。
 どの人もまじめで、怠けようとしている人なんて、ひとりもいなかった。
 仕立屋さんは、アルツハイマーで入院している妻もいて、介護保険や医療負担がどんどん厳しくなっているのを嘆いていた。生活保護を考えるけれど、妻の葬式代としての貯金100万があると、保護は受けられない……1食の食費代は、100円と言っていた。
 「この缶詰がね、結構うまいんだよ」と、缶詰1缶と3パック99円の納豆を1パック。
 また、秋田県では過疎化がひどく、廃村になったところがいくつもあるらしい。
 お米や野菜をつくることでは食べていけない国。
 食料自給率がこんなに低いのに、これから先どうなってしまうのだろう?と、番組を見ながら暗澹たる気持ちになる。

 本人の怠惰のせいではなく、明らかに今の日本の構造上の問題、と専門家も指摘。
 働いても働いても這い上がれない層が現在10%~20%がいる(特に地方)、そういった層が社会に沈殿していくことは非常に重大な問題、とも。 
 日本人は我慢強いから、外国ほど犯罪に走ったりしない。その代わり、自殺率が年々上昇しているのかと思う。

 34歳のホームレスの男性は、見たところ健康そうだし、性格も穏やかないい人そう(に見える)。アルバイトでやってきて職業経験があまりないからと、こういう人が職にも就けず、ホームレスなんていう事態は、社会にとっても損失なのではないだろうか?(かろうじて就けたのは、時給800円の洗車のバイト)
 一文なしの専業主婦だって、DV夫から逃れるためのシェルターがあるのだから、こういう人たちを救済するシェルターがあってもよいのに。
 そういうことにこそ、税金を使ってほしいもんだ。
 もうひとりの30代のホームレスの男性は、両親の離婚後、母親が養育放棄、高校生だった彼はアルバイトに明け暮れ、就職活動もできず、そのままアルバイト人生で、30を過ぎてそのバイトもなくなり、今は古雑誌を拾ってその日暮らしだそうだ。
 これは、教育格差がそのまま後の経済格差につながるパターン。
 50歳のシングル・ファザーは「子どもたちを大学にやれないかも知れない……親の責任だ」と涙ぐんでいた。
 いや、それはあなたの責任ではなく、国の責任だと言いたかった。
 日本は、奨学金も充実していないからねえ……。

 ほんのちょっとレールから外れてしまうと、こんな現実が待っている日本。
 小泉首相が掲げてきた構造改革とは一体なんだったのだろう。

 ……などということを真剣に考えてしまった。
 こういう番組を見ると、他人事とは思えない。
 私も離婚後、つい最近まで、かなり長い間、まさしくワーキング・プア!だったから。
 この数年、アルバイト、派遣、フリーランスと綱渡りのように生きてきた。働いても働いても這い上がれなかった。
 今だって別に、全然リッチではないし、今のところ正社員ではないけれど、毎月、固定給と最低限の社会保険だけは得ることができた。
 番組でも、「30過ぎると仕事がない」という言葉が度々出てきたけれど、40代に突入してしまった私が――それこそ学歴もコネもなーんにもない!――よくもサバイバルしてきたものだと、自分のことも顧みたりして妙に感慨にふけってしまった。この年齢で「まともな職」を探すことは、本当に厳しい。厳しいというか、ほとんど不可能といっていい。

 それでもなんとかサバイバルできたのは、きっと、私が人に依存する(頼る)術に長けていたのと、それに応えて助けてくれる人に恵まれていたからだ。内田樹氏によると、そういう術もこの世界をサバイバルするためには必要な力、とのことらしいが……。
 30代の男性ふたりに関して言えば、こんなふうに「人に頼る」術もなく、人間関係をつくる余裕もなかったのか、社会や人とのつながりの輪からポツンと切り離されてしまっている印象を受けて、胸が痛む。

 思うことはいろいろあるが、自分に関しては、これ以上あまり人に頼らず、当面ひとりで生きていくためには、今の仕事を続けることが一番で、そのためには健康が一番だと思う。

 それにしても、弱いのは、貧乏なのは、努力が足りないとか自己責任だという考え方は嫌いだ。
 今、「強い人」だって、先はどうなるかわからない。いつ「弱い人」になるかわからないのだから。
 そういうことを私は忘れたくない。

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コメント

この番組を見ました。資本主義経済の影の部分がいよいよ浮き彫りになってきたと実感致しました。僕は現在休職中の20代後半ですが、不採用が何十社となり厳しい現実を目の当たりにして激しい不安を感じています。以前からニートやフリーター等の社会問題のドキュメントは欠かさず見ていました。
今回、ワーキングプアという言葉はこの番組で初めて知りました。働く貧困層という意味らしいですが、数人の学者がコメントしていましたが、所詮は「机上の空論」だと思いました。30代でホームレスの方がいらっしゃるこの現実を国・政府は把握しているのでしょうか!セーフティネットと称されるいかにもらしい対策でも恐らく物理的に全部を把握するのは無理だと思います。
これから消費税・社会保障費等も徐々に上がるでしょうし、ますます住み辛い世の中になっていくのでしょう。いつの世も煮え湯を飲まされるのは末端の人間なのでしょうか・・・

投稿: hidekazu | 2006年8月 2日 (水) 06:39

hidekazuさん
コメントありがとうございました。
いきなり正社員は本当に厳しいですが、とりあえず派遣で仕事して、仕事ぶりを見てもらい、また自分もそこでその会社を見極め、契約社員→正社員というステップアップを図る、というコースもあり得なくはない、と思います。
製造業の派遣は本当にひどい状況のようなので、当てはまらないと思いますが。
私も、私の周りの30代(それも後半の)の女性たちも、そんなふうにしてサバイバルしていますよ。
……と、お役に立たないかも知れませんが、机上の空論ではない、現実に根ざしたひとつの提案でした。
20代後半は若い! なんとかいい道が見つかりますように。

投稿: Kate | 2006年8月 3日 (木) 00:47

 はじめまして。私のページをご覧になってくださり、ありがとうございました。同内容になりますが、Kateさんのブログにもコメントを残そうと思います。

 番組は、やりきれない気持ちで見ました。これまで日本で「普通」と思われてきた生き方の道幅が、いつのまにかとんでもなく細く頼りなくなってきたことを見せつけられたように感じたからです。「まとも」な家庭に育ち都市部で正社員にならなければ、途端に「転落」の危険にさらされてしまう社会ってなんだよ、と思いました。Kateさんはご自身の生活を「サバイバル」と称していますが、こんなせっぱ詰まった言葉を使わなければいけない社会は、直さないといけないと思います。

 「ワーキング・プア」については、ネット上での盛り上がりを受けて、今後は他のメディアでも次々に取り上げられるはずです。考える機会は増えますが、世の中がどう判断するかが気にかかります。ただでさえ「自己責任」という優越感と不信感まじりの怪物がでかくなってきていますから……。

投稿: M・F | 2006年8月14日 (月) 03:13

M・Fさん
コメントとトラックバック、ありがとうございます。

日本の社会は、年寄りと若者と、あと年いったシングルウーマンにも厳しい国ですよ、
ほんとに。

M・Fさんは、ジャーナリズムのお仕事に携わっていらっしゃるんですよね?
ぜひ、ワーキングプアの問題に取り組んでほしいです。

投稿: Kate | 2006年8月14日 (月) 12:28

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