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2006年6月 4日 (日)

コーラス

 

 Img_02502続いて、昨年(2005年)公開された映画のなかで、ベスト1だった作品も、以前のブログから再び掲載。コーラス です。

 『コーラス』は フランス、孤児、少年合唱――と、私の心の琴線に触れまくりの映画。私は、ロックバンドやテクノを好きになるずーっと前、少年合唱団にはまっていたことがある。何を隠そう、中学生の頃、ウィーン少年合唱団の追っかけのようなことを、一時やっていたことがあるくらい(ほんとに、ほんの一時)。その後、声の質感的にイギリスの聖歌隊の方が好きになって、20代の頃イギリスへ旅行したのは、彼らの音楽を現地で聴くのも目的のひとつであったりした(CDもロック以上にどっさり持っている)。Img_02462
 さて、映画は、悪ガキたちを、新しく赴任してきた教師が合唱で皆をひとつにまとめあげ、少年たちが歌うことによって成長し、変化していくというお話。舞台は、不良少年を更生させる寄宿舎者付きの学校で、1949年のこと。それだけ言うと、ありがちな話なのだが、その感動はありがちなものではなかった。

  

Img_02482_1 いろんなものが鬱積して疲れかかっている心と身体に、栄養を送り込んもらったような、自分のなかで、ひしゃげていた何かが、真っ直ぐに治されたような感じ。うーん、言葉を連ねても、映画の魅力に迫れないが......。

 ボーイソプラノのソロを歌うピエール・モランジュ役のジャン=バティスト・モニエ君は、本当にフランスの「サン・マルク少年少女合唱団」のソリストだそうで、「天はニ物を与えず」と言うけれど、彼の場合は、与えられてしまったんだなあと思う。ほんとに美少年! その容姿といい、歌声といい、演技といい、天はニ物どころか、三物を与えられたのであろう。暗い陰りのある表情から、喜びに満ち溢れた笑顔まで、びっくりするくらいの表現力で、あの年齢であそこまで眼で語れるというのは、どういうことなんでしょうか??? 演技の経験者でもなかったのに。Img_02452
 ただ、美しすぎる少年は、成人するとびっくりするくらい変わる可能性もあるので、美しすぎると先が心配だったりもする。欧米人は、おとなになると、骨格とか凄く変わってしまうから。おとなへの階段をいい具合に上がってくれるのを、願うばかりだ。
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 というわけで、モニエ君は相当よかったのだが、実は私の心をもっと強力に鷲掴みにしたのが小さなペピノ。両親が戦争で死んじゃったのも理解できず、土曜になると、いや土曜以外の日も、校門の内側に立ってお父さんが来るのをじっと待ち続けているなんて、その設定はあんまりだ。

 でもって、自分がいつからこの学校へ来たのかもわからなくなっちゃってるし、歌も歌えないし、上級生には寝室から追い出されるし。もう、映画のなかのペピノをはっしと抱きしめて連れて帰りたかった。暖かいスープとパンケーキをつくって食べさせたいような......ふだん、私は自分のことばかり考えている傲慢な人間で、実際に子どもを生み育てたこともないし、母性本能とか、そーゆうものは著しく欠落している人間ではないかと常々思っているのだけれど、自分にもそういうものが欠片くらいはあるのかも――なんてことを思ってしまった。映画なのにねえ。とにかく、ペピノを見ていたら、母性本能をくすぐられまくりというか(笑)。そう思ったのは、決して私だけではないと思うのだけれど。それほど、ペピノ役の子(マクサImg_02442ス・ペラン)は、子ども本来の魅力に満ちていたんだと思う。多分、幼いマクサス君は、どこまでペピノ役をやっていて、どこまでが素の自分のままなのか、まだ線引きが曖昧で、それが幸いしたのではないだろうか(ちなみに、この映画の出演者の実の息子)。

 ラストシーン――教師と子どもたちの別れは、切なかったけれど、あの子どもたちの手と紙飛行機と歌声にはやられた。号泣というほどではないけれど、ほろりと涙。そうして、悪者は罰せられ、誠実で実直な者は然るべき道を歩み、才能のある子どもには未来が用意され、そして愛に飢えている子どもには愛が与えられる。不条理なことばかりの世の中だから、たとえ映画でも、こういう世界観を提示されると、生きる力が湧いてくるような気がする。
 緑の木漏れ日が輝く、あの並木道は、彼らの未来を祝福しているようだった。

 モニエ君のボーイソプラノの歌声も、じき失われてしまうのだろう。そんな一瞬の輝きも、映画には閉じ込められている。あの映画の製作の時期に、彼の歌声が存在していたこと、そうして彼が発掘されたこと、ペピノことマクサス君の存在そのもの、すべてが奇跡のようなつながりのなかで生まれたのだ。ほかの生徒役の素人の子どもたちも、皆、よかった。
 映画に限らず、創作というものには、そんなふうに天使が訪れることが、ごく稀にあるのかも知れない。
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