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2006年4月30日 (日)

トスカーナの休日

 Ts_1時折、映画や本に接していて、今まさに出会うべくして出会ったのだなと、思わされることがある。このトスカーナの休日もそんな作品。WOWOWでよく放送していたのだけれど、いつも録画し忘れて、観る機会を逃がしていて、先日やっと観ることができた。少し前ではなく、今、このタイミングで観られて、むしろよかったかも。まさに、偶然、どこからかプレゼントされたような映画。
 離婚した作家のフランシス(アメリカ人)は、友人の好意で、トスカーナに傷心旅行へ。そこで、衝動的に築300年の「ブラマソーレ」(太陽への憧れ、というような意味)という古い家を買ってしまう。家の改築をしながら、人との出会いあり、恋愛あり……と、いろいろな出来事の中で、本来の自分を取り戻してゆき、新しい人生を歩み始めるというストーリー。
 グローバリゼーションの国からやって来ると、ロハス(?)なイタリアは本当にワンダーランド。家を買う時も、「神のお告げがないと売れない」などと家主に言われたりするところがおもしろい。
 登場人物も魅力的で、フェリーニの映画に出演したことがあるという設定の、謎の貴婦人が出てくる。ジュリー・デルピーが年取ったらこんな感じ?というような女優さんが演じていて、なかなかよかった。離婚の痛手から立ち直れないでいるフランシスに彼女はこう言う。

フェフェ(フェリーニのこと)はいつもこう言っていたわ――“後悔は時間の無駄。過去は現在を殺す”。悲しみ続けて、幸せになれる?

 Img_0099フランシス役のダイアン・レインも素敵だった。もう決して若くはないけれど、魅力的な女性のフランシスにぴったり。
 イタリア男のあまりにロマンチックなささやきに思わず吹き出してしまったり。でも、彼によって久々に情熱を取り戻したフランシスは、ひとりになった時、ベッドの上で「私も捨てたもんじゃない! まだ魅力があるのよ!」と足をばたつかせて、はしゃいだり。そういうのって、わかるわかるという感じ(笑)で、女性はとても共感できるシーンだったと思う。

 一見トスカーナっぽい(?)風景だけど、実は西荻(笑)

 かと思うと、その男はフランシスとのちょっとしたすれ違いに我慢できず(イタリア男って、ほんとに今にだけ生きてるって感じ!)、他の女の元へ行ってしまいふられて、「私ってバカみたい」とがっかりしたり。
 また、届いた昔の荷物の本の間から、元夫との写真がはらりと出てきて悲しくなったり、そんな何気ないシーンの描き方が繊細でよかった。
 
 イタリアに来てから、だんだんとより美しくセクシーになっていくフランシスの姿を見ていると、やっぱりイタリアって人を解き放つ何かがあるんだろうな、と思ってしまう。
 あいにく、イタリアには行ったことないのだけれど、イタリアへ行って官能が目覚める、みたいなテーマの映画が本当に多いので、きっとそうなんだろう。
 実際、私がイギリスへ行った時も、イギリス男性にはほとんど声をかけられず、声をかけてくるのは全員イタリア男だった。自分が異国の地へ行ってもナンパするのか、と感心したものだが(笑)。まあ、それは挨拶みたいなものだとよく言われているけれど……。

 それはさておき、フェリーニの「甘い生活」のオマージュ的なシーンがあったり、フランシスのシックな白いドレスが、「旅情」のキャサリン・ヘプバーンが着ていたドレスに似ていたりと、そんなディティールも楽しい。
 パーティやイタリア料理のシーンもたくさんあって、観ていると元気になる。私は、小説でも映画でも、おいしそうな食事のシーンのある作品が大好き。
 それから、トスカーナで赤ちゃんを産むフランシスの親友とか、改装を手伝ったポーランド人とか、いろんな人と家族のようにつながっていくのも、もうひとつのテーマ。他人なのだけれど、家族のように共に生きるというテーマ……どこか懐かしい気がするなと、思い出したのは、吉本ばななの初期の小説。そう、これはトスカーナ版『キッチン』なのかも知れない(関係ないけど、イタリアで吉本ばななの小説って、とても人気があるそうだ)。
 
 そして、「ブラマソーレ」の一滴の水も出なかった枯れた古い蛇口から、徐々に水が滴り始め、ラストでは、ほとばしるように水が溢れ出てきたのが、象徴的だった。

 うーん、さっきの日記では「GWが超地味でも、不平不満はない」と書いたばかりだけれど、私もトスカーナの休日がほしいぞ!
 イタリアで衝動的に家を買ってしまえるのも、経済力があればこそ。やはり女も経済力だなあ。などと締め括ったら、身も蓋もないか……でも、離婚などで深い痛手を負った時、立ち直って出直すには、何よりお金が必要、というのは自分自身の経験からも言えることだ。
 私は、離婚後、その「何より必要なお金」も仕事も何もまるでなかったので、なかなか壮絶な思いをした。今も完全に立ち直ったわけではないが……トスカーナに行けなくても、せめて、行きたい!と言えて、かろうじて職も得て、こんなブログを書き綴るくらいの余裕はできた(笑)。おっと、話が逸れましたが。
 ところで、これは実話を元にした映画だそう。ますます、興味をひかれる。原作の翻訳本も出ているらしいので、読んでみたい。

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コメント

Kateさん
ちょっとばかり、ご無沙汰してました。
私も“トスカーナの休日 Under the toscan sun”大好きなんです。ダイアンレインの美しさとイタリアの街の美しさ。すごく、みているだけでうっとり。
マルチェッロと出会った場所(おそらくアマルフィーのポジターノあたり)には是非旅で行ってみたいです。
それにしてもマルチェッロはいかにもイタリア男で、少し笑えました。かっこよかったのはたしかですが....。

投稿: うめめだか | 2006年5月 2日 (火) 09:10

うめめだかさん
そのマルチェッロという名前がいかにも、女たらしのイタリア男って感じですね(笑)。
「君の瞳の中で泳ぎたい」とか言われたら、私も吹き出しそう。
それにしても、イタリアの風景って映画的ですよねえ。

投稿: Kate | 2006年5月 2日 (火) 23:30

kateさんはじめまして。昨日、今日、初めてこの作品を見る機会ができ、フェフェの「過去は現在を殺す」というくだりが気になり検索しましたところ、こちら様にたどり着きました。なんか久々に心に残る作品を見た感じがしましたし、そういえば・・・ですがダイアン・レインさんの映画ってはじめてでした。

80年代。90年代?くらいにCMで良く拝見していた記憶があり、あの頃の日本のCMは外タレさんものが多かった気がします。


kateさんの離婚後のお話で仕事のこと、お金のこと・・・などの文にはとても共感を覚えました。私は結婚はしたことはありませんが、自営をしていて、その部分にすごく追い込まれ大変な思いをしたことがありましたので・・・笑。。少しはそういうことを書けるようになったものですから、この時期のkateさんの心の余裕が出だしたころと同じ状況なのかもしれません。。^^(性別は私は男です)


2006年4月30日の記事のようですが、私はこの年の6月中旬より新しい行動に出て現在のちょっとばかしの余裕が出ました。ですのでこのkateさんの記事のころは地獄の中の地獄だった時期で本当に大変だったことと、立ち直りに向かう時期が訪れる分岐点のころだという年月日の偶然性にも少々驚きました。


長文失礼しました。お仕事含め頑張ってくださいね!!^^

投稿: kei | 2014年4月 5日 (土) 13:26

keiさん
コメントありがとうございます。
8年(!)も前の記事を読んでコメントいただけるなんて、嬉しいです。
最近はtwitterばかりで、それはそれで気楽で楽しいのですが、やはりブログはこんなふうに時間が経っても読んでくれる人がいるのが面白いですね。
自分でも久々に読み返して、いい映画だったなと思いました。
仕事が安定したらしたで、仕事にエネルギーをがっつり取られてしまうのですが、なんとか時間を見つけてブログも時には書いていこうと思っています。

投稿: kate | 2014年4月 5日 (土) 17:21

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